ステントグラフト内挿術
ステントグラフト挿入術は、大動脈瘤を治療するための新しい手術方法です。
ステントグラフトとは、人体に馴染みやすい人工布を筒状にし、これにステントと言われるバネ状の金属を縫い付けた新しい人工血管で、これを小さく圧縮してカテーテルの中に入れたまま使用します。カテーテルを、患者の太ももの付け根を4~5cm切開して動脈内に挿入し、カテーテルの先端を動脈瘤のある部位まで進めたところで、収納してあったステントグラフトを動脈内に押し出すことで行うことができるため、術後わずか1日で歩行できるなど、患者への負担が非常に軽いのが最大の利点です。
この方法の場合、腹部や胸部を切開する必要はなくなります。動脈内に押し出されたステントグラフトはステント金属のバネの力と患者自身の血圧により広がり血管の内壁に張り付けられ、外科手術のように直接縫い付けることなく固定されます。大動脈瘤自体は切除されず残っていますが、ステントグラフトで覆われたこぶの中は血流が無くなり、それにより次第に小さくなっていきます。
こぶが小さくならなくても拡大しなければ破裂の危険性がなくなります。以上のように、ステントグラフトによる治療は外科手術に比べて切開部が小さく、患者の身体にかかる負担が非常に小さいのが特徴です。ステントグラフトがずれた場合は、ステントグラフトと血管の隙間から血液が流れるようになり治療の目的がなくなってしまいます。この場合、新しくステントグラフトを追加するか、従来どおりの外科手術をすることになります。
もともと、この治療方法は、1991年に最初の成功例が報告されたのをきっかけに、企業が製造に参入し、アメリカの数社がFDA(アメリカ食品医薬品局)の認可を得たことで、ステントグラフトは広がっていきました。
日本では、2007年に日本脈管学会など関連する11学会でステントグラフト実施基準管理委員会が設立され、施設基準や実施医基準、指導医基準を定めることとなりました。実施医の認定基準は、これまでの大動脈瘤の治療経験を委員会で審査した上で、さらに研修を受講、実技試験を経て初めて認定されるという非常に厳しいものとなっています
ステントグラフトによる治療は比較的新しい技術であり、グローバルな観点から見ても10年以上の長期間にわたる十分な追跡調査の実績が少ないのです。そのため、治療後も引き続き定期的に経過を見ていく必要があります。
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