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~有給取得は計画的に~勤務医の有給休暇に関するルールとQ&A【荒木弁護士解説】

~有給取得は計画的に~勤務医の有給休暇に関するルールとQ&A【荒木弁護士解説】

1.はじめに

2024年4月から医師の働き方改革がスタートしました。勤務医の先生方は、以前よりも休みが取得できるようになりましたか?有給休暇は、取得できていますでしょうか。

勤務医の退職時期は、圧倒的に3月末退職が多い関係上、有給消化に関するご相談も例年年明けから2月、3月にいただくことが多いです。

しかしながら、3月末に退職者が集中する関係上、有給消化の希望も3月に集中するため、病院から有給消化について難色を示されてしまい、押し切ってまで有給消化をするか否か悩んでしまうケースがみられます。

本記事では、勤務医の有給消化に関するルールや質問をQ&A形式でご紹介し、更に有給消化を円満に行う方法をご紹介したいと思います。

2.年次有給休暇の付与に関するルール

年次有給休暇は、雇入れの日から6ヶ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に付与されます。(労働基準法39条)

勤務医も労働者ですので、法律上所定の要件を満たせば、当然に年次有給休暇が付与されます。

更に、日数は常勤の場合よりも減りますが、非常勤医師やアルバイト医師も年次有給休暇の付与の対象です。

年次有給休暇は、非常勤医師やアルバイト医師の場合でも一定の要件を満たした場合に所定の日数が付与されます。

法律上付与される年次有給休暇の日数は、以下の図1及び図2の通りです。(労働基準法第39条)

常勤医師の場合の有給休暇の付与日数 非常勤・アルバイト医師の場合の有給休暇の付与日数

ご自分の年次有給休暇の付与日や日数は、勤務先の医療機関の就業規則で確認して下さい。

労働基準法の規定に従うと、常勤医師として4月1日に入職して全労働日の8割以上出勤した場合には、10月1日に10日間の年次有給休暇が付与されます。

もっとも、労働基準法に定める労働基準は最低の基準であるため(労働基準法1条2項)、労働基準法で定められる年次有給休暇の基準を上回る条件で年次有給休暇を付与することは当然に認められています。

医療機関によっては、入職時点で一定の日数の年次有給休暇を付与したり、基準日を設けて入職日から半年経たずに年次有給休暇が付与される場合もあります。

そのため、実際に自分に年次有給休暇が付与されるタイミングや付与される日数については、就業規則や雇用契約書を確認してください。

常勤医師など一定の対象者には年5日の年次有給休暇を取得させることが医療機関に義務付けられています。

2019年3月までは年次有給休暇の取得日数について雇用主である使用者に義務はありませんでした。

しかしながら、年次有給休暇の取得率が低調であり年次有給休暇の取得を促進するために、2019年4月から全ての企業(医療機関も含みます)において、年10日以上の年次有給休暇が付与される全ての労働者に対して、年次有給休暇の日数のうち年5日については、使用者が時季を指定して取得させることが義務付けられました。(労働基準法39条7項)

なお、ポイント④で解説する労働者の個別の時季指定又は計画年休制度によりすでに年次有給休暇を労働者が取得している場合は、使用者が指定する5日から差し引かれます。(労働者39条8項)

要するに、図2のオレンジ色で着色した10日以上の年次有給休暇が付与される労働者(常勤、および非常勤のうち週3日で5.5年以上、週4日で3.5年以上勤務している者)について、労働者自身の時季指定、使用者による時季指定、計画年休のいずれの方法により、年間最低5日間の年次有給休暇を実際に取得することが保障されているのです。

年次有給休暇は労働者が指定する時季に付与されるのが原則です。

使用者は年次有給休暇を原則として労働者が請求する時季に付与しなければなりません。(労働基準法39条5項本文)ただし、使用者は、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、時季を変更することができます。(労働基準法39条5項ただし書)

「事業の正常な運営を妨げる場合」にあたるためには、当該労働者の年休指定日の労働がその者の担当業務を含む相当な単位の業務(課の業務・部の業務)にとって不可欠であり、かつ、代替要員を確保するのが困難であることが必要であり、使用者が代替要員の確保の努力をしないまま直ちに時季変更権を行使することは許されないと解されています。

また、裁判例では、恒常的な要員不足により常時代替要員の確保が困難であるというような場合は、「事業の正常な運営を妨げる場合」に当たらないと判断されています。(西日本ジェイアールバス事件/金沢地裁平成8年4月18日判決)

そのため、医療機関が恒常的な医師不足により代替の医師の確保が常時困難な場合には事業の正常な運営を妨げる場合に該当せず、勤務医が指定した時季に年次有給休暇を取得できるものと考えます。

年次有給休暇の時効は2年間であるため、付与されてから2年以内に取得しないと時効により消滅します。

年次有給休暇の請求権の時効は2年間であるため、年次有給休暇は付与されてから2年以内に取得しないと時効により消滅してしまいます。(労働基準法115条)

なお、時効により消滅する年次有給休暇を長期入院等の取得事由を限定した形で使用できるような仕組みが採用されているケースもあるため就業規則も併せて確認しておいて下さい。

3.勤務医の有給休暇に関するQ&A

勤務医の方々から退職時の有給消化に関してよく頂く質問をご紹介したいと思います。

医療機関は勤務医の退職時の有給消化を拒否することはできないと解されています。

3月末に勤め先の病院を退職し4月から別の医療機関に転職します。年次有給休暇が20日間以上余っていたので退職日まで一括して年次有給休暇を指定したところ病院から有給消化を拒否されました。有給消化はできないのでしょうか。
退職時に未消化年休を一括時季指定する場合には、他の時季に年次有給休暇を付与する可能性が無いので、使用者は時季変更権を行使しえないと解されています。

そのため、医療機関は勤務医に退職時に未消化の年次有給休暇の消化を求められた場合、これを拒否することができないと考えます。

しかしながら、退職時に未消化で残っている年次有給休暇の日数が多いほど年次有給休暇の消化による職場への影響は大きくなります。

このような事態を避けるためにも、医療機関側としては日頃から勤務医の年次有給休暇の取得を促して取得してもらうことが重要になりますし、勤務医も計画的に有給休暇を取得して未消化の有給休暇を減らしておくと退職時の有給消化が職場に与える影響が少なくなります。

未消化の年次有給休暇を買い取る法的義務は病院にはありません。労使合意のうえで買い取ることは可能です。

3月末に勤め先の退職をしますが代替の医師の確保が困難な事情も理解できる一方で、未消化の年次有給休暇を無駄にはしたくありません。病院に未消化の年次有給休暇を買い取ってもらうことは可能でしょうか。
年次有給休暇の取得は労働者の権利ですが、未消化の有給休暇を使用者に買い取って貰う権利まではありません。使用者には未消化の年次有給休暇を買い取る法的義務はありません。

もっとも病院が任意に未消化の有給休暇を買い取ることは禁止されていませんので、病院と勤務医が合意した場合には、未消化の年次有給休暇を買い取ってもらうことも可能です。

医師の働き方改革で導入された代償休息は、年次有給休暇ではなく、時間休の取得や勤務間インターバル幅の延長によることが原則です。

医師の働き方改革において導入された勤務間インターバル※の間に緊急の業務が発生して従事した場合の代償休息は、年次有給休暇にて付与することは可能でしょうか。※勤務間インターバルは、特例水準(BC水準)の医師については法的義務、A水準の医師については努力義務です。
代償休息の付与は、所定労働時間中における時間休の取得又は勤務間インターバル幅の延長のいずれかによることとされています。また、年次有給休暇は勤務医が取得時季を決めるものであり、医療機関がその意に反して付与することはできません。

いかがでしたでしょうか。年度末が近づくと有給消化についてのご相談を多く頂きますが、3月の有給消化は希望が重なるため病院から強い難色を示されることが少なくありません。

年内のうちから早めに計画的に年次有給休暇を取得しておき、未消化の有給休暇を少なくしておくことが退職時の有給消化の労使のトラブルを減らすポイントになると思います。

本記事をお読みになっている勤務医の方々は、この機会にご自身の年次有給休暇の日数を確認して計画的な年次有給休暇の取得を検討してみてください。

<参考資料>

〇法令

  • 労働基準法39条、115条

〇判例

  • 西日本ジェイアールバス事件/金沢地裁平成8年4月18日判決

〇その他参考資料

弁護士 荒木 優子
https://araki-law.com/
第二東京弁護士会所属。勤務医の労務問題やクリニック運営に関する法律相談などが専門。医師の労働問題に関してSNSやメディアで日常的に発信し、X(旧Twitter)でのフォロワー数は1.2万人以上。
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