<医道審議会>みなし公務員も対象!医師の収賄とその処分について【荒木弁護士解説】
今年に入って、医学系研究科の大学院教授が共同研究相手から高額接待を受けて逮捕されたことが報道されました。
特に、医局に所属する医師の場合、医局人事により、民間病院、公的病院、大学病院など様々な運営主体の病院を異動するため、ある行為が勤務先次第で処罰の対象となったり、ならなかったりすることもあり得ます。
また、医師の場合は、刑事罰だけでなく、刑事罰の後、医業停止等の行政処分を受けるケースもあり、医師免許にも関係するため注意が必要です。
収賄罪は、公務員が、職務に関し、賄賂を収受する犯罪です。
公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、収賄罪(単純収賄罪、刑法197条1項前段)が成立します。
法定刑は、5年以下の拘禁刑です。
請託(一定の職務行為をするようにすることの依頼)を受けての収賄の場合は、受託収賄罪が成立し、法定刑は、7年以下の拘禁刑と定められており、単純収賄罪より刑が重くなります。
適法な職務行為をしても収賄罪が成立する点は、注意が必要です。なお、不正な行為をした場合には、加重収賄罪が成立します。
収賄行為等をした上で、職務上の不正な行為をしたり、相当な行為をしなかったときは、加重収賄罪が成立し、法定刑は、1年以上の有期拘禁刑が定められており、単純収賄罪や受託収賄罪よりも更に重い法定刑が定められています。(刑法197条の3第1項)
なお、賄賂を自己以外の第三者に受け取らせた場合には、第三者供賄罪(刑法197条の2)が成立し、法定刑は5年以下の懲役刑が定められています。
賄賂を自己が受け取らずに、親族や自己が代表を務める法人に受取らせる場合がこれにあたります。
収賄罪の主体は、公務員です。
もっとも、公益性・公共性を有する業務を行っていたり、公務員の職務を代行したりするみなし公務員も含まれることに注意が必要です。みなし公務員や類似の例については、2.みなし公務員にて詳しく解説しています。
地方公務員となる医師
公立病院(県立病院、市立病院、都立病院など)で勤務する医師
自衛隊病院で勤務する医師
矯正医官
みなし公務員とは、その職務の内容が公共性や公益性を有していたり、公務員の職務を代行していることから刑法その他の罰則の適用において公務員に準じる扱いを受ける者をいいます。
国公立大学(附属病院を含む)に勤務する医師
国立研究開発法人、中期目標管理法人※の医師
※国立成育医療センター、国立がん研究センター、国立病院機構など
国立研究開発法人科学技術振興機構法
(役員及び職員の地位)
第十九条 国立大学法人の役員及び職員は、刑法その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。
あてはまる医師の例)
各NTT病院に勤務する医師
逓信病院に勤務する医師
各JR病院に勤務する医師など
公務員ではありませんが、設立の根拠となる法律に刑法の贈収賄の規定と同様の規定が定められているので注意しましょう。
根拠法令の例)
NTT法(日本電信電話株式会社等に関する法律)19条
日本郵便株式会社法 19条、20条
旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律17条、18条
医局人事の場合でも、雇用契約は勤務先の病院を運営する主体との間で締結される点は、他の病院職員と同様です。日本においてコンプライアンスの意識は年々高まっており、医療業界も例外ではありません。贈賄側より収賄側の方が法定刑が重くなっており、更に医師の場合は刑事だけではなく、行政処分の可能性もあり、その場合の損失は大きいです。
職場が変わった際には、改めて、自身の立場が、公務員、みなし公務員、みなし公務員類似の場合に当てはまるのか、確認して意識しておくことが重要です。
クレジットカード利用(飲食・物品購入)497万円
海外旅行代金等(家族分含む)146万円
新幹線回数券(13回分)190万円
商品券(10回分)110万円
懲役1年8月(実刑)
没収 商品券13枚
追徴 940万6749円
第一審 平成26年 2月17日 東京地裁 判決
控訴審 平成27年2月26日 東京高裁判決
上告審 平成28年 8月30日 最高裁 判決
医業停止2年 令和元年6月
マンション賃料:521万9000円
旅費:13万126円
懲役1年10月(実刑)
追徴534万9126円
第一審 平成29年3月9日 福島地方裁判所判決
控訴、上告されていますが、いずれも棄却されています。
なお、贈賄側の医療器具販売会社の社長は、第一審判決(福島地裁平成28年12月26日)において、懲役1年6月、執行猶予4年の判決が言い渡されています。
医業停止2年 令和4年1月
懲役1年、執行猶予3年
津地方裁判所令和3年12月28日
医業停止 1年 令和6年2月
2019年以降に行政処分が決定され、公表された事案だけでも3件の医師による収賄事件がありました。
なお、収賄には該当しなくとも、就業規則等の院内の規則で禁止されていることもあります。当然ですが、収賄に該当しないからといって、全く問題ないということではありません。事業者側が問題ないといっていても当てになりません。少しでも疑問に思ったら、勤務先に確認するなどして、問題無いか自ら確認することが重要です。
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