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宿日直勤務の法的な取り扱いについて~許可ありでも割増賃金が発生するケースとは~【荒木弁護士解説】

宿日直勤務の法的な取り扱いについて~許可ありでも割増賃金が発生するケースとは~【荒木弁護士解説】

1.医師の働き方改革と医師の宿日直許可件数の急増

2024年4月から医師の働き方改革がスタートして1年が経ちました。勤務医の皆様の働き方に変化はありましたか?

医療機関の体制における大きな変化といえば、医師の宿日直許可の取得が挙げられると思います。

医師の働き方改革が始まるにあたり、医師の宿日直許可の件数が令和2年に144件、令和3年に233件であったのが、令和4年には1,369件、令和5年には5,173件に急増しました。(医療機関の宿日直許可に関するFAQ(2024年8月6日ver.))

医師の宿日直許可の許可件数は令和5年に5,173件まで増加

2.宿日直勤務とは

医師が宿日直許可を得た宿直、日直勤務に従事した場合、一律の宿日直手当しか支払われないのでしょうか。

以下、そもそも宿日直許可とは何かという基本事項から、宿日直許可の対象となる勤務中に急患対応などの通常業務に従事した場合の取扱いなどについて、2025年1月に追加された厚生労働省のQ&Aも踏まえつつ整理します。

宿日直許可とは? 労働密度が低く、十分な休息をとることが可能と認められる宿日直は、労働基準監督署長から「宿日直許可」を得ることができ、宿日直許可の対象となった業務に従事する時間は、労働基準法の労働時間規制の対象から除外される仕組み。

医師の働き方改革の開始前に医師の宿日直許可の取得件数が急増した理由は? 2024年4月から原則年960時間の医師の時間外労働の規制がスタートしましたが、
(1) 宿日直許可を受けた場合の宿直や日直の勤務は、上限規制との関係で労働時間に算入されないこと (2) 勤務間インターバルとの関係で、宿日直許可を受けた宿日直(9時間以上連続したもの)については休息時間として取り扱えること から、多くの医療機関において宿日直許可の取得が進められました。

すなわち、宿日直許可を受けた宿日直勤務に従事した時間は、原則年間960時間(A水準)といった時間外労働の規制の対象となる労働時間に算入されません。

また、勤務間インターバルについて、原則として業務の開始から24時間を経過するまでに9時間の継続した休息時間を確保することが必要ですが、宿日直許可を受けた宿日直(9時間以上連続したもの)については休息時間として扱うことができます。

このように医療機関が医師の宿日直許可を取得すれば、2024年4月から開始された医師の働き方改革を踏まえた勤務シフトの作成や労働時間の管理がしやすくなるため、改革の開始前に医師の宿日直許可の申請および許可の件数が急増したものと考えられます。

もっとも、宿日直許可は、労働密度が低く、十分な休息をとることが可能であることから日勤等の通常勤務とは法的に異なる扱いがされています。

実際に、「医師、看護師等の宿日直許可基準について」と題する厚労省の通達においては、次のチェックリストに該当する場合に宿日直許可を与えるように取り扱うように記載されています。

3.~宿日直勤務チェックリスト~

皆様が従事している宿日直勤務は、以下の項目を満たしていますか?

(例)
  • 医師が、少数の要注意患者の状態の変動に対応するため、問診等による診察等(軽度の処置を含む。以下同じ。)や、看護師等に対する指示、確認を行うこと。
  • 医師が、外来患者の来院が通常想定されない休日・夜間(例えば非輪番日であるなど)において、少数の軽症の外来患者や、かかりつけ患者の状態の変動に対応するため、問診等による診察等や、看護師等に対する指示、確認を行うこと。
(勤務の態様)
  • 常態として、ほとんど労働をする必要のない勤務のみを認めるものであり、定時的巡視、緊急の文書又は電話の収受、非常事態に備えての待機等を目的とするものに限って許可するものであること。
  • 原則として、通常の労働の継続は許可しないこと。したがって始業又は終業時刻に密着した時間帯に、顧客からの電話の収受又は盗難・火災防止を行うものについては、許可しないものであること。
(宿日直の回数)
  • 原則として宿直勤務については週1回、日直勤務については月1回が限度となる。

宿日直勤務があるドクターの皆様は、何個チェックが入りましたか?全てチェックが付いた場合にのみ宿日直勤務として取り扱うことが可能なのです。

では、上記チェックリストの条件が守られないときの扱いは、どのようになるのでしょうか。

4.宿日直勤務に関するQA

【ケース1】

宿日直許可ありの宿日直勤務中に通常の勤務時間と同態様の業務※に従事した場合の取扱いを教えてください。

※医師が突発的な事故による応急患者の診療又は入院、患者の死亡、出産等に対応すること
以下のとおり、時間外手当の支払いと代償休息について解説します。

(1)時間外手当の支払い
通常の勤務時間と同態様の業務に従事した時間については、宿日直手当に加えて時間外手当の支払いが必要になります。

(2)代償休息の付与について
宿日直許可を受けた宿日直(9時間以上連続したもの)を休息時間として取り扱っていた場合には、宿日直中に通常の勤務時間と同態様の業務に従事した時間について代償休息の付与が問題となります。

代償休息とは、インターバル中に緊急業務が発生して医師が業務に従事した場合には、その時間分の代償休息を、発生月の翌月末までに付与するというものです。

代償休息は、A水準(時間外労働の上限年960時間)の医師については努力義務であるのに対し、B、C水準(時間外労働の上限年1,860時間)の医師に対しては義務となります。

勤務間インターバルと代償休息の詳しい解説は、医師の働き方改革、勤務医のアルバイトへの影響と注意点は?【荒木弁護士解説】を参照ください。

【ケース2】

いわゆる当直バイトのケースで、許可あり宿日直勤務のみに従事する非常勤医師が、宿日直勤務中に、突発的にやむを得ず診療等に従事した場合の時間外手当の支払いについて教えてください。
いわゆる当直バイトのように、許可あり宿日直勤務にのみ従事した場合も、常勤医師の宿日直勤務と同様に宿日直中に診療等の通常日勤業務に従事した場合には、宿日直手当に加えて従事した時間分の時間外手当の支払が必要になります。

当直バイトの場合は、宿日直許可の有無に関係なく、当直中の業務の発生の有無、業務時間の長短に関係なく、一律の当直手当の支払いのみというケースも少なくないのではないでしょうか。

法的には、許可あり宿日直勤務中に、突発的にやむを得ず診療等に従事することがありうる場合には、宿日直手当とは別に、当該業務に対する通常の賃金を労働条件として定めて労働契約において明示し、当該通常の賃金に基づいて算定した賃金又は割増賃金の支払が必要となります。

【ケース3】

当院の得ている宿日直許可では、一人の医師が宿直に就けるのは週1回までとされていますが、当初、許可を受けた宿直に入る予定であった医師が急遽出勤できなくなったことから、やむを得ず別の医師に宿直をさせたことにより、当該医師は、結果的に当院で週に2回宿直を行うこととなりました。

この場合でも、当該医師の2回目の宿直に対する賃金としては、宿日直手当を支払えばよいのでしょうか。
やむを得ず許可を受けた回数を超えて宿日直に就かせた場合には、許可を受けた回数を超えて就かせた宿日直については許可の効果が発生せず、通常の労働時間規制の適用を受けることとなります。

そのため、2回目の宿直に対する賃金としては、宿日直手当ではなく、その時間に支払う必要のある通常の賃金(必要な割増賃金を含む。)を支払う必要があります。

宿日直の回数の上限は、原則として宿直週1回、日直月1回とされています。※

※宿日直回数の原則宿直週1回、日直月1回という上限は、医師毎ではなく、医療機関毎にカウントされます。そのため、同じ医師が同じ週に医療機関Aで宿直1回、医療機関Bで宿直1回の計2回の宿直を行っても上記宿日直回数の上限規制には抵触しません。

なお、医療機関の人員体制等を考慮して、例外的に原則の上限回数以上の許可がされることがありますのでご自身が勤務される医療機関に適用される宿日直回数の上限は、勤務先の医療機関に確認ください。

宿日直許可を受けた回数を超えて就いた宿日直勤務※については、日勤と同様、時間単価×宿日直勤務時間×割増率の時間外手当を含む割増賃金の支払が必要であるとされる点について注意が必要です。厚生労働省が作成した医師の時間外労働の上限規制に関するQ&Aの(令和7年1月28日追補分)に掲載されています。

※原則として、週2回以上の宿直勤務、月2回以上の日直勤務が当てはまりますが、勤務先の医療機関が許可を受けている宿日直の回数は、勤務先に確認ください。

5.最後に

宿日直許可は、労働密度が低く十分な休息をとることができることから認められています。

許可を受けた後に、宿日直中に急患対応や入院患者の急変対応等が常態化するなど、許可の内容に沿った運用ができなくなった又は許可の内容から勤務実態が事実上乖離してしまった場合には許可の効果が及ばなくなることもあります。

宿日直勤務に従事されるドクターの皆様も宿日直勤務中の勤務実態を意識していただければと思います。

<参考資料>

  • 医療機関の宿日直許可に関するFAQ(2024年8月6日ver.)
  • 断続的な宿直・日直勤務の許可基準(労働基準法第41条関係)(昭和22年9月13日)(発基17号)
  • 労働基準法関係解釈例規について(昭和63年3月14日)(基発150号、婦発47号)
  • 医師、看護師等の宿日直許可基準について(令和元年7月1日基発0701第8号)
  • 医師の時間外労働の上限規制に関するQ&A(令和5年9月29日追補分)(令和6年2月26日追補分)(令和7年1月28日追補分)
弁護士 荒木 優子
https://araki-law.com/
第二東京弁護士会所属。勤務医の労務問題やクリニック運営に関する法律相談などが専門。医師の労働問題に関してSNSやメディアで日常的に発信し、X(旧Twitter)でのフォロワー数は1.2万人以上。

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