【医師の副業】アルバイトのつもりが刑事事件に―「楽して稼げる」医師の副業に潜む法的リスク【荒木弁護士解説】
最近、SNSなどを利用して、簡単に稼げるなどの広告で人を集め、副業を名目とした詐欺や犯罪に巻き込まれるなどの事件が多発しており、警察など公的機関が注意喚起をしています。
医師のアルバイト、外勤といえば、医療機関での当直や外来などの診療のアルバイトが一般的ですが、その他にも執筆や講演の依頼をされたり、企業から自社のPRを頼まれたり、ビジネスへの参画を求められたり、コンサルの依頼を受けたり、など多様な仕事の依頼が来ることがあると思います。
今回は、副業として医師に話が来る可能性がある仕事の類型で、注意が必要なものについて具体例を挙げて解説します。
勤務実態がないにもかかわらず、クリニックの開設者や管理者(管理医師)に名義上就任することを、副業のような形で募集されるケースがあります。
クリニックは、初期研修を修了した医師に管理させることが義務付けられており(医療法10条1項)、原則として常勤であることが必要です。しかしながら、常勤の管理医師の確保の困難さから、名義のみ管理医師への就任を求められることがあります。
上記医療法10条の規定に違反した場合には、罰金刑も定められており、最悪の場合、刑事事件化するリスクもあります。2013年の報道ですが、東京の美容形成外科医院に院長として名義を貸していたとして、警視庁生活環境課は12日、名古屋市の男性医師(35)と三重県桑名市の男性医師(62)を医療法違反(管理義務など)の容疑で書類送検したことが報道されています。
また、医師が、脱毛クリニックの実質的な運営会社と業務委託契約を締結し、開設者の名義貸し、勤務実態や業務の実態はなく、月15万円の報酬を受け取っていたケースでは、運営会社が破産した後、元患者から支払済で未施術の施術代金の返金を求められる集団訴訟にまで発展しています。
雇われ院長の「名義貸し」のリスクについては、「名義貸し」は特に要注意~「雇われ院長」の法的リスク~で詳しく解説しています。
医療機器メーカーから勤務医に謝礼が支払われることがありますが、複数の観点から問題になり得ます。
地方公務員である市立病院に勤務する眼科医が白内障動画を提供するという名目で80万円の賄賂をレンズ販売会社から受領し、同社のレンズを優先的に使用したとして、単純収賄罪(刑法197条1項前段)の罪に問われ、懲役1年6か月執行猶予3年、80万円の追徴の有罪判決を受けています。(大阪地裁令和5年10月31日判決)
この眼科医の事例では、犯行が発覚しにくいよう契約書を作成するなど手口が巧妙であると非難されています。契約書を作成して業務の対価のように見せかけても実態が賄賂であれば、このように刑事事件化して責任を問われるリスクがあります。
さらに、刑事裁判で罰金刑以上の有罪判決が確定した場合は、医道審議会で審議されて医業停止や免許取消などの行政処分も受ける可能性があります。
軽い副業のような感覚で謝礼を受け取った行為により、刑事処分、行政処分、更には職場からの処分など様々な制裁を受けるリスクがあります。
受け取って問題ない謝礼なのか、慎重に判断することが重要です。
収賄の場合の行政処分の相場ですが、筆者の調査によれば、令和以降の医道審議会で審議された医師の収賄は、3件あり、医業停止1~2年の行政処分を受けています。事案の詳細は、<医道審議会>みなし公務員も対象!医師の収賄とその処分についての記事で紹介しています。
複数の医療機関において、眼科手術の際に術野(患者の身体の一部を含む)を記録した手術動画を医療機器メーカーに提供していた問題で、個人情報保護委員会が調査し、個人情報を適切に取り扱っていなかった医療機関に対して注意喚起が行われました。
個人情報保護委員会が公表した資料によると、一部の医療機関が提供した動画に患者本人の氏名等が記載されていました。また、手術動画を第三者に提供する際に患者の同意を取得しないなどの不備があったそうです。
更に、所属先の医療機関に無断で、医師個人が手術動画を提供していたケースもあったとのことです。
(2)で紹介した、医師個人が所属する医療機関に無断で手術動画を医療機器メーカーに提供した場合は、職場の規則に違反し、勤務先から懲戒処分を受けるリスクもあります。
医師の外勤・副業で上記の他に注意が必要な雇用と業務委託の違いについては、医師の外勤・副業~雇用と業務委託の判断基準は?~の記事で解説しています。
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医師が有する信頼や権限、情報などを利用しようというビジネスは多岐にわたります。魅力的な条件の誘いが本当に法的に問題ないかどうか、引き返しづらくなる前の早い段階で入念に確認することをおすすめします。
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